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不眠症の男【小説)


   不眠症の男 ( 小 説 )

   男はいま不思議なことに眠れないでいる

   部屋の中に涼気が入りひよわな蚊が
   男の灯の下に集まる

   睡魔が男にはやってこないのはなぜなのか
   頭の中の神経が興奮して男を眠らせないのだ

   もう何日目だろうか男がこいう状態でいるのは・・・
   考えれば考えるほど覚めてくるのだった。

   隣の部屋にいる友のいびきが波のように
   リズム感をもって聞こえてくる。

   不眠症の男はやむをえずペンをとった。
   眠れないからペンをとって書きなぐることにしたのだ。

   いま男が書いている文章は不眠症の標題で
   ペンを走らせているという。

   なんともおかしな話ではないだろうか
   不眠症について不眠症の男が書きなぐっている。

   不眠症の男が不眠症について講釈をしているのだ
   その男は熱くなって狂気のごとく懸命に書いている。

   男の体は熱射をあびたように熱いのかも知れない。
   半袖のシャツも下着も脱ぎ捨て上半身裸になった。

   男は机の上のコップに入った冷水をグッと
   いっきに飲みほしふうーとため息をついた。

   深い夜の闇で人は静かなる眠りのなかで
   夢をみているに違いない

   そんな時不眠症のこの男はただひとり不眠の中で
   エネルギーを消耗しているのだった。

   時計の音だけが機械的な単調な音として
   この男の耳に届いていることであろう。

   友のいびきは激しく変わり今度は
   やすらかな寝息へと変わっていった。

   男は「なんという幸せな奴だ」そうつぶやいた。
   眠れる奴はとにかく幸せでうらやましいのだ。

   そんなつぶやきを残して不眠症の男はただ
   感ずるがままにペン運動を続けているのだった。

   異常者のペンは今不眠症という標題で思考し指先に
   鈍い力をいれつつ左から右へ日本語で書きなぐり
   夢遊的作業でペンをすべらしている。

   青いインクがつぎつぎと新しい文字を生みそれが
   意味をもって不眠症をなくすひとつの男の試み
   として小さな灯りの下で白いページを埋めている。

   はいストップ

   不眠症のこの男はこれからどうなるんでしょう?
   この続きはあなたの手で綴ってくださいね。


































       




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